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2003/06/16
Vol.39  移民法ニュース:
取得が困難になるビザ申請事情

ビザの申請の審査を取り巻く環境がここ数年大きく変化していることは以前にもお伝えしていますが、弊社で取り扱うケースや寄せられる質問の内容を分析すると以前とは明らかに違う状況に於かれていることが分かります。このように最近の移民局及び国務省の状況をお伝えすることが問題を直ちに解決できる事とは思いませんが、すくなくともあなただけが、あなたの会社だけが、あなたの頼んでる弁護士だけがこんな状況に置かれているのではないということはお分かりいただけると思います。

ビザ発給の問題がこれほど深刻になり、その影響がこれほど甚大になったのは、過去に例がありません。これまで一日で取得できていたビザが一ヶ月かかる、それも運がよくて…の話。これまで一ヶ月で取れていたビザが、一年かかる、それも運がよければ…の話です。
移民局での審査の遅れ
最近の移民局での審査の遅れは深刻な問題で、審査が終わるまで1年以上かかるというのがもはや特殊なケースとは言えない状況である。現在の移民局BCISの前身であるINSは、大部分の申請の処理時間を減らすための「バックログ減少プラン」を開発していた。そしてまさにこのプランが始動しようとしたときに、数々の省庁がかかわるIBISデータベースによるチェックが完了するまでは申請を認可してはならないという指令が発せられたのである。このデータベースは、長年INSによって使用されてきたものであるにもかかわらず、INS自身の持つデータベースと連結していないという事実が問題である。すなわち、INSによる申請認可判断業務と全く独立したプロセスが必要とされているのである。このことにより、申請ビザの種類にもよるが、おおむね10~40%ほど余分な時間が必要となっているのである。このデータベースの問題は、別の問題によってさらに深刻なものになっている。一度セキュリティーチェックを行って問題なしとして、ビザを発行した後でも使用したデータベースを移民局や領事がアップデートすることが不可能なのである。従って、ある名前に関する否定的な情報は、いつまでも消されずにデータに残り、ある場合には、他のデータベースにまで残されてさらに問題有りとして合致する件数を増やす結果となりかねないのである。たとえば移民局が「ICISシステムに記載されているJohn Smithは、ビザを申請しているJohnSmithとは別人である」と認定したとしても、IBISのデータをそのようにアップ
デート出来ないのである。Smith氏はビザを申請するたびに、長々しいチェックプロセスが繰り返される羽目になるのだ。また、移民局が抱えバックログが増える理由は他にもある。移民局内部の「ノーの文化」がそれである。昨年、当時のINSコッミッショナーから、「INSの職員が手続き怠って、間違ってビザが発給された場合、厳しく罰せられる」とのメモが発せられた。当然のことながら、多くのINSスタッフは、簡単に申請を認可すると罰せられるぞと理解した。結果として、申請の多くに対しINSから「証拠提出の要求」が行われることになったが、その多くは全く意味のない、あるいはごく些細な質問であった。そしてこの「要求」により、さらに数週間、あるいは数ヶ月の時間が掛かるようになったのである。特に小さな会社がそのような「要求」の対象となっている。また、少し前まではごく簡単に取得できるビザだったものが、否認され、その後アピールすることになり、それがまた一年以上かかるということになっている。現在持っているビザの延長であったり、同じようなカテゴリーの申請の場合でも否認される申請が増加している。即ち数年前には認められた申請が、今では同じ法律によって否認されているのである。しかも、この否認は、小規模の企業に特に頻繁におこっているように思われる。

このバックログはどのくらい深刻なのだろうか?西海岸や南西部の企業が、H-1Bを取得する場合、追加の要求がない場合でも6ヶ月から7ヶ月かかる。申請企業が小さな会社の場合は、追加資料の要求があることを覚悟しなければならないので、10ヶ月かかるというのが相場となってしまう。もちろん、特急申請という方法(追加の資料要求がない場合で15日間)もあることはあるが、エクストラのコストが1000ドルかかる。小さな企業にとっては大金である。
領事館での審査の遅れ
数々の要因が重なって、ビザスタンプの取得に掛かる日数がどんどん増え続けている大きな原因はセキュリティーチェックであろう。国務省は、他の省庁に問い合わせたセキュリティーチェックの結果を2ヶ月、3ヶ月、時には8ヶ月も待たなければならないのである。このようなセキュリティーが不必要だと主張する人はほとんど居ないだろうが、数多くのチェックのうち、少なからぬ部分が、説明不可解と思われる理由に基づいて行われているのである。例えば、TechnologyAlert Listに関連する仕事で米国を訪れる人たちが、長々と待たされている状況がある。しかし、このListに関するビザ申請がこのように遅れていては、安全性に関する信頼自体を疑わざるを得ない。そもそも、誰が安全チェックの対象になるかという問題よりも、なぜ、安全チェックにこんなにも時間がかかるのかということが問題である。同じことが、FBIによるチェックについても行われている。国務省は、FBIから回答を得ない限り、ビザを発給することが出来ない。しかし、このチェック依頼が、本当に安全上問題があるとの根拠のある情報に基づいているケースはほとんどないと思われる。実際は、申請者の人種や、国籍に基づく心配であったり、申請者の名前がたまたまCLASSデータベースに載っているものと合致(ヒット)したケースなどがほとんどであろう。このような合致は、結果としては、問題なしとなるであろうが、犯罪者と同姓同名であったり、ビザ発給に関係のないような些細な問題のためリストされていたり、そもそもリストアップしたこと自体がミスであったりというケースなのである。しかしながら、この合致(ヒット)全てを、ともかくチェックしなければならないのである。その間大使館、領事館はFBIなり、CIAから回答を得るまで待たなければならない。ところがFBIやCIAとってビザ発給は、優先順位の高い仕事でないことは明らかである。すくなくとも、これをスムーズに行うためにシステムを変更したり、投資をしたりするほど、重要な職務ではないことは、皆様お分かりの通りである。その結果はビザ発給の遅れである。それに加えて、国務省は非移民ビザ申請者ほぼ全員を、面接することもほのめかしている。しかも、大使館、領事館は、この新たな荷重を、人材の増加や、施設の新設なしに、現在の人員、施設でこなすようにとの指令も付いているのである。国務省にはビザ申請者をあらかじめスクリーニングをするシステムがない、ということは、様々なチェックは、面接が行われるまでスタートしないということである。かくして、ビザスタンプの取得に何ヶ月もかかるのが当たり前ということになりそうである。今すぐ必要な労働力をそんなに長い間待つことの出来る会社がどれだけあるのか疑問である。
移民局で遅れ、さらに領事館での遅れが重なって、以前は2ヶ月で取れるものだったH-1Bの取得に7ヶ月から9ヶ月もかかることがある。それも、資料の追加要求や、安全チェックの必要がない場合での話である。ところが、追加要求や安全チェックの必要がないというケースが少なくなっているので、緊急に必要な専門技術者を国外から呼ぶにしても一年以上かかってしまっても普通の状態と言える。もちろん、国家の安全が最優先であることそのものに議論の余地はない。しかしながら安全の追求も合理的に行われなければならないし、また、経済活動の流れを止めないという観点を忘れてしまってならない。この不安定な時期だからこそ、アメリカ経済の重要な担い手である中小企業の活動を止めないようにしなければならないのである。お役所仕事による遅れや、省庁間の協調の欠如、資金の不足、「ノーの文化」などのために、これら企業が国際市場においてハンディキャップを課せられるようであってはならない。ビザ発給の現場でこのような事実が起こっていることを、皆さんに広く知っていただくことにより、事態が多少とも改善されることを願うばかりである。

*本稿はAILA(アメリカ移民弁護士協会)のPalma R. Yanniのスピーチを基にしています。
弁護士・デビッド・シンデル
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