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2009/04/23
Vol.174  H-1B詐欺申請の調査報告その2

前回に引き続きH-1B詐欺申請に関する調査報告書について紹介します。2008年9月、国家安全保障・記録検査局(NSRV)の部署の一つとしてビザ申請に関わる詐欺の発見と国家の安全保障を担っているFDNSオフィスよりH-1B申請における詐欺行為及びコンプライアンス(法令順守)違反について調査報告があったことは前回お話いたしましたが、今回実施されたH-1B申請詐欺調査方法及び結果について具体的に紹介します。
今回調査対象となったケースは2005年10月1日から2006年3月31日の間に移民局へ提出されたH-1Bケースで、認可されたもの、却下となったもの、審査中のものを含めた全96,827ケースから無作為にサンプルとして選ばれた246ケースが対象ケースとして調査されました。この246ケースの大半が既に認可を受け、認可を受けたビザ取得者個人はH-1B保持者としてアメリカに滞在していました。
当調査によると、故意的な詐欺は無かったものの、雇用主やビザ取得者個人が移民法に準拠していなかったという根拠がいくつかのケースで発覚しました。今回のこのBFCAの調査目的として、FNDSはこれら発覚したケースには少なくとも次のような専門的違反(technical violation)があったと指摘しました。
1.H-1Bスポンサー会社が、ビザ取得者個人に対してH-1B申請に必要なトレーニング費を要求した、または実際にその額を賃金から差し引き、結果としてH-1B申請上必要な最低賃金額を下回ることになっていた。
2.H-1Bスポンサー会社が、ビザ取得者個人に対し、H-1B申請上必要な最低賃金(ポジションや就労場所により異なる)を支払うとH-1B申請に必要なLCA(Labor Condition Application)に誓約し労働省より認可を得ていたにもかかわらず、支払うと誓約していたその賃金を支払っていなかった。
3.ビザ取得者個人がLCAで報告していた就労場所とは違う場所で就労していた。
4.ビザ取得後直ぐ、または継続的にH-1Bに関わる仕事が存在しないということで、雇用主がH-1B申請内容とは異なり、非生産的労働としてビザ取得者個人を雇用していた(一般に“benching”と称され、H-1B申請上認可を受けた期間であるにもかかわらず、全く賃金が支払われていない、またはH-1Bに関わる仕事が存在しないことから申請上の労働時間に至らないことを理由に必要な最低金額分が満額支払われていない、など)。

更にBFCAを通して発覚した詐欺には次のようなケースもありました。
1. ビジネスそのものが存在しない。
2. H-1B申請時に証拠とすべき学位や経験に関する手紙や書類が虚偽のものであった。
3. 補足書類への署名が偽造されていた
4. ビザ取得者個人がH-1B申請(I-129やLCA)上の職務内容とは明らかに違う職務についていた(一つの例として、H-1B申請に必要なLCAにはポジションをBusiness Development Analystとしていたにもかかわらず、実際の職務内容はセルフサービス式コインランドリーで洗濯をしたり、洗濯機の維持管理をすることであった)。
このように様々な詐欺行為や専門的違反が明らかとなったわけですが、統計的には調査対象となった全246ケースのうち、最終結果として51ケースに詐欺行為、専門的違反、もしくは多重の専門的違反が見つかりました(これら全ての違反ケースが犯罪調査または刑事告訴というレベルまで到達するものではありません。今回の調査の主な詐欺の対象は、犯罪調査または刑事告訴に到るような大きな詐欺行為ではなく、H-1B申請上、例えば簡単にごまかしができる、また乱用できるような詐欺申請行為です。なぜならばそれら違反行為は犯罪調査または刑事告訴までは到らなくとも、詐欺申請として繰り返し、または組織だって申請される要因となっている上、高い確率でそれら申請がうまくいってしまっている場合があるからです)。

(次回に続く)
弁護士 デビッド・シンデル
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