エネルギーに満ち溢れた女性である。明るい笑顔、周囲をリラックスさせる落ち着いた雰囲気も持ち合わせ、
活き活きとしていて、温かい。
「NYは大好きですよ。刺激的なビジネスタウンだし、一見冷たいようで実は人間味にも溢れた街ですよね。
ちょっと日本の関西地方に似ている気がして、だから京都出身の私の肌には合うのかもしれませんね」言って
爽やかに笑うのは横本めぐみさん。
マンハッタンはミッドタウンに、NTT DoCoMo USA社とAT&T Wireless社が共同運営しているショウルームがある。
NTT DoCoMo USAのStrategy & Business Developmentに所属し、「Showroom Attendant」の肩書きを持つ横本さんは、
このショールームに常駐している。彼女は主にアメリカの法人顧客やビジネスパートナーを対象に、NTT DoCoMoが
産み出した最先端のテクノロジー、「FOMAサービス」(テレビ電話や高速データ通信を実現する第3世代移動通信
サービス)を利用した新製品、新技術についてのデモンストレーションを行なっている。
製品に関する専門知識が要求されるのは当然である。だが、必要なのはそれだけではないだろう。適切な対応、
親切で誠実な態度、わかりやすい説明、そして場を和ませる笑顔・・・・・・。
会社にとっては重要な意味を持つポスト、誰にでもできる仕事では決してない。しかし横本めぐみさんと向かい
あって話を聞いていると、これはまさに彼女の天職ではないかとさえ思えてくる。そんな「Showroom Attendant」
の仕事とこれまでのキャリアについて、横本さんは時に関西人らしいジョークも織り交ぜながら、淀みない口調で
語ってくれた。
――この仕事を選んだ理由は何だったのですか?
「日本にいた頃、大阪で同じような通信業(国際電話)の会社で6年間ほど働いていたことがあったんですよ。
そうしたら今回NYで、偶然だったんですけどNTT DoCoMo USAさんからお話があって、このショールーム勤務が
決まりました。やっぱり人に逢う仕事が良かったので」
――それではこの仕事の1番の魅力というと何ですか?
「沢山の人と出逢えることですね。いろいろな業界の、ここに勤めていないと絶対に逢えないような方々。
各業界のトップの方々とか。私、本当に人と逢うことが大好きなんです。人と人との繋がりみたいなもの。
それが得られることが、やっぱり最大の魅力かな。あとは・・・・・・アメリカ人の大人の方が、最新の機器を手に
取って、子供のように無邪気に喜ばれる姿が見られる事。それも楽しいし大好きですよ(笑)」
――お客は主にアメリカ人とのことですが、言葉の面で難しいことなどありませんか?
「もちろん英語はネイティヴではありませんが、それがハンデだとも思いません。心を込めて、誠意を込めて話せば、
必ずその気持ちは通じて歩み寄って頂ける。中国語でやってきた経験も生きている気がします。
真心を込めて、デモンストレーション。言葉が完璧でなくとも気持ち次第で必ず想いは通じる。そういったことを
この仕事を始めてから学びました。握手の仕方にしても、相手の目をしっかり見て、名前を覚えて、今までやって
きた事とは違うこともアメリカ人の先輩から特訓を受けました。本当に日々勉強です。もっともっと、まだまだ
精進しなきゃいけないですよね」
――仕事を得るのに、そして進めていくのに必要だったスキルというと何が挙げられますか?
「これまでのすべての職歴が今に役立っていると思います。今まで幾つかの仕事をやってきました。苦労したことも
あったけど、無駄なことなんて何も無かった。人との付き合い、事務作業の方法、スケジュール管理の仕方・・・・・・、
過去に経験したすべてが役に立っていると思います」
横本めぐみさんの過去の職歴、それもまた一種独特である。
日本では短大の英文科を卒業。しかし「誰でも勉強している英語ではなく、何か新しいことをやらなくては」と
思い立った横本さんは、卒業前に大学を一時休学、単身で北京に渡り中国語の習得に励んだ。
そして大学卒業後、彼女は留学中に学んだ中国語を生かし、なんと当時全盛を極めた台湾プロ野球界に職を得ることになる。
日本人選手が多く参加し、まるで昨今のメジャーリーグのような盛り上がりを見せていた時代の台湾プロ野球。
そこで広報&秘書を務めることになった彼女は、日本のメディアに台湾野球を紹介する役割を一手に引き受けることに
なったのだ。
「メチャクチャ刺激的だった」という台湾プロ野球界の仕事。メディア相手の苦労、巨大なプレッシャー、
選手たちの世話、興行世界の裏表・・・・・・。
「3年間・・・・・・凄い3年間でした。やりがいがある反面、あんなに苦労したことも初めてだし、あれほど辛い
仕事は他に経験がありません。でもね、そんな体験を1度でも味わってしまうと、人間もう怖いものはない。
なんでもかかってこい!今はどんな仕事でも、そうやって思える(笑)。やっぱり、貴重な体験でしたね」
台湾プロ野球界に属した、壮絶な3年間。選手、メディアといった、ビジネスマンではない人たち。広報&秘書として、
そんな彼らとどう付き合っていくか。人間関係の勉強にもなった。或いは彼女の人生観を決定付けるような3年間だった
のかもしれない。
その後、大阪で、NYで、横本さんは新たな職を得ることになる。だがその姿勢は終始一貫している。
「人と関わっていきたい。殻に閉じこもっていないで、人に接して、何かを感じて。そして日々勉強、そうすれば・・・・・・」
――仕事上でも、日常生活でも、何か日々心掛けている事などありますか?
「人と人との間で、優しさ、思いやりを忘れないという事ですかね。アメリカ人が相手でも、他の国の人でも。
例えば接する相手の名前を覚えること。それも思いやりのひとつではないでしょうか。
礼儀、優しさ、感謝の心を忘れないように。自分を見失わないように。それができている人は何をやっても
成功するのでは?反対にそれをないがしろにしている人は、私の目から見ても、やっぱり上手くいっていない人が
多いのではないかと思います」
――これから仕事を探す人へ、メッセージなどあればお願いします。
「仕事によって、合う、合わないは必ずあると思います。不採用になったからダメだ、で終わるのではなくて、
何がダメだったのか分析してみるといいと思います。どこが悪かったか。その経験を無駄にせず、どうプラスに
結びつけるか。無理して自分を合わせる必要はないと思うけど、でも失敗の中から何かを学んでいくことはできる。
本当に、無駄なことなんて何もないんですよね」
「私なんかが、こんな偉そうに・・・・・・」
インタヴューの最中、横本さんは何度もそう言った。だが、彼女の話は決して机上の空論などではない。日本、
中国、台湾、NY、次々と居場所を変える中で、すべては自らの種々な経験に裏打ちされたセリフなのである。
それゆえに深い説得力があるのだと思う。
NTT DoCoMo USAとAT&T Wirelessのショールームで、横本さんがニコニコしながら語った言葉。「真心」
「誠意」「思いやり」「日々、勉強」それらの真摯な想いは、この場所を訪れるアメリカ人たちにも間違いなく
伝わっているはずだろう。
「Showroom Attendantの仕事は天職では?」などと書いた。だが貪欲な向上心を持ちながら、常に他人への
気遣いも忘れない横本さんは、本人が言うように「何をやっても成功する」タイプの人間なのかもしれない。
インタヴューの最後にもう1つだけ、予定に無かった質問を付け加えてみた。
――今後について、目標というか、「夢」みたいなものはありますか?
これまでも好きな事だけをやってきて、現時点でも紛れも無い成功者の横本さんに、失礼な質問かな、と
微かに危惧しながら。だけど、溌剌とした答えはすぐに帰ってきた。
「私の夢はね・・・・・・本を出したいんですよ!もっと勉強して、文章修行もして、これまでの経験を生かして。
そうやって書き溜めたものを沢山の人に読んで貰えたら、って思って。でも良い文章を書きたかったら、
もっともっと魅力的な人間にならないといけないですよね!」
横本さんの向上心には決して限りがない。いつかそんな彼女が綴った本を、是非とも読んでみたいと思うのは
僕だけだろうか?そして彼女は、これから先の人生で、どんな新しい1ページを切り開いていくのだろうか?
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